人間とは何か?
人間とは、アッラーが最上の姿形にお創りになられた被造物で す。アッラー(y)は仰っています: 実にわれら(アッラーのこと)は、人間を最善の姿形に創 り上げた。 (クルアーン 95:4)
またアッラーは、人間を完璧な形にお創りになられると同時に、 しかるべき均整もお授けになりました。アッラー(y)はこう仰りま す: 人間よ、寛大なるあなたの主においてあなたを欺かせたの は何なのか?。かれこそはあなたをお創りになり、あなた (の形)を整えられ、あなたを均整の取れた形にされたお方。 かれはあなたを、かれのお望みの姿に構築された。 (クル アーン 82:6-8)
アッラーは人間を、最高かつ完全な容姿にされました。アッラ ー(y)はこう仰っています: (アッラーこそは大地を安住の場とされ、空を天蓋とされた お方。またあなた方の姿を形作られ、その姿形を最善の姿と され、あなた方によき糧をお恵みになられたお方である。こ れこそはアッラー、あなた方の主。恩寵高き万有の主アッラ ーよ。 (クルアーン 40:64)
またアッラーは人間を、他の全ての被造物よりも尊ばれ、また 高貴な存在とされました。アッラー(y)は仰ります: そしてわれら(アッラーのこと)はアーダムの子ら(人類 のこと)を高貴な存在とし、陸に海に彼らを運んだ。また彼 らによき物を糧として授け、われらが創造したあらゆるもの の上に位置づけたのだ。 (クルアーン 17:70)
アッラーは宇宙に存在する全てのものを、人間が利用するため に従属させられました。アッラー(y)は仰っています: またかれ(アッラーのこと)は天地にあるあらゆるものを、 あなた方のために仕えさせられる。実にその中には、熟慮す る民へのみしるしがあるのだ (クルアーン 45:13)
また人間は独特の生物であり、他のものから進化を遂げたわけ ではありません。アッラー(y)は仰りました: (アッラーは)かれの創造した全てを見事なものにされ、 また人間の創造を泥から始められた。 (クルアーン 32: 7)
人間を高貴な存在とし、その位階を高めたクルアーンの文章と、 人間を動物同等と見なす理論の間には、いかに大きな差異がある でしょうか?クルアーンは、人間を動物と同様に描写したりはし ません。但し、人間が制限なくその欲望を追及し、その知性や聴 覚や視覚を天地の創造の素晴らしさを熟考することに利用しない 場合は、その限りではありません。アッラー(y)はこう仰っていま す: そしてわれら(アッラーのこと)は地獄のために、多くの ジンと人間を創った。彼らには心があるが、それでもって熟 慮することがない。また彼らには眼があるが、それでもって 見ることもない。そして彼らには耳があるが、それでもって 聴くこともない。彼らはまるで畜獣のよう、いや、それより も迷い去っている。彼らは(警告を)ないがしろにする者た ちなのだ。 (クルアーン 7:179)
これは、人がこれらの感覚を適切な場所‐つまり熟考と思慮‐ において使用すれば、アッラー(y)の恩寵と共にかれへの信仰へと 導かれるという事実によるものです
イスラーム中世期の学者イブン・アル=カイイム(アッラーの
ご慈悲あれ)は、こう言っています:
「アッラー(y)は、ありとあらゆる被造物の中から人間をお選
びになられた。そしてアッラーは人間に、かれを崇拝するた
めにお創りになられるという栄誉を授けられた。またアッラ
ーは宇宙の全てのものを人間に従属させられ、知識をお与え
になり、かれのご寵愛のためにお選びになられた。アッラーは人間に、他のいかなるものにも与えられなかったものを、
お与えになられたのである。またアッラーは、天地とその間
にある全てのもの‐アッラーに最も近しい存在である天使で
さえ‐を、人間に従属させられた。アッラーは人間が眠って
いる時も起きている時も、座っている時でも立っている時で
も、彼らを守護する者としたのである。またアッラーは人間
にかれの啓典を授けられ、かれの使徒をお遣わしになられた。
アッラーは彼らに話しかけられ、そして彼らの内のある者に
特別のご寵愛をおかけになられた。また彼らの内のある者は、
非常に敬虔であった。アッラーは彼らにかれの秘密を明かさ
れ、また彼らを、かれの英知と慈愛の対象とされた。またア
ッラーは人間のために、天国と地獄をお創りになられた。か
れの創造とご命令、報奨と懲罰は、最上の被造物である人間
ゆえのものである。人間にはかれのご命令に服し、禁じられ
た物事を回避する義務があるが、それらに応じて報奨や懲罰
を与えられるのである。」
人間の創造における様々な段階
最初、人間は言及すべき何ものでもありませんでした。アッラ ー(y)はこう仰っています: 人間には、言及すべき何ものもなかったような、ある一時 の時間があったのではないか? (クルアーン 76:1)
イスラーム中世期の大学者アル=ガザーリーは、こう言ってい ます: 「人間に、アッラーの祝福について熟考させてみるがよい。 いかにかれが人間を、卑しく、高貴さや成熟さとは程遠いつ まらない存在から、高い地位に上げられたかということを。 人間は無の状態の後に存在させられた。つまり死の状態の後 に生を受け、沈黙の状態の後に語り始めたのである。また人 間は当初盲目であったが、後に鋭い視覚を得、その後に再び その視力は衰える。また人間は無知の後に知識を獲得し、迷 妄の後に正しい導きを得、貧困の後に豊かさを得た。人間は 無であったのだ。そして無であることよりも忌むべきことがあろうか?人間は、アッラーのご命令により、大きな存在と なったのである。 (「宗教諸学の再生」より)
人間は何から創造されたか?
アッラー(y)は人間が、男性の精子が女性の卵子に入ることによ って創られるということを明らかにされています。アッラー(y)は こう仰いました: 人間に、一体彼自身が何から創られたかを考えさせるがよ い。彼は射出される液体から創られたのだ。それは後背部と 胸骨の間から排出する。 (クルアーン 86:5-7)
またアッラー(y)は、人間がこの手順によって子孫を残すという ことも明らかにされています。アッラー(y)は仰っています: そしてかれ(アッラー)こそは人間を水からお創りになり、 それを血縁関係と(血縁ではなく婚姻による)縁戚関係によ るものとされたお方。あなたの主は全能のお方であられる。 (クルアーン 25:54)
またアッラー(y)は、かれが定められたその時が来るまで、胎児 が外的要素から安全な場所に保護されることも明らかにされてい ます。アッラー(y)は仰りました: われら(アッラーのこと)はあなた(人間)を、取るに足 らない液体から創ったのではないか?それからそれを決めら れた時期まで堅固で安泰な場所(子宮のこと)に据え、(そ の生命の運命を)定めたのである。(アッラーは、物事を) 定めるに何と素晴らしいお方であろうか。 (クルアーン 77:20-23)
またアッラー(y)は、胎児が 3 つの「闇の段階」を経て成長する 旨を明らかにされています。胎児は特定の段階を経た後、アッラ ーの御力によって最後の段階に到達し、それから子宮の中に存在 し、やがてこの世に生まれ出るのです。アッラー(y)はこう仰って います: (アッラーは)あなた方を、あなた方の母親の胎内にお創 りになられる。そして三つの闇における、創造に次ぐ創造 (を行われる)…(クルアーン 39:6)
人間の創造における諸段階の詳細
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第一段階
男女の精液からなる混合液の一滴。アッラー(y)はこう 仰いました: そしてかれ(アッラーのこと)は、雌雄のつがいをお創り になられた。射出された一滴の精液から (クルアーン 53:45-46)
アッラーのご意思と共に、精子は女性の分泌液に混じり、そし て卵巣に到達します。男女の精液の混合液を、アラビア語で「ヌ トゥファ」と言いますが、これが人間の発達における最初の段階 となります。尚卵巣に到達しなければ、精子は死んでしまいます。 アッラー(y)は仰りました: われら(アッラーのこと)は人間を混合した一つの生殖細 胞から造り、彼を試練にかけるべく聴覚と視覚を与えた (クルアーン 76:2)
この段階において、いくつかの人間的な特質が出現し始めます。 アッラー(y)はこう仰いました: (不信心な)人間に災いあれ。その不信仰の何と激しいこ とであろうか!(考えさせてもみよ、アッラーは)彼を一体 何からお創りになられたのか?(かれは)彼を一滴の精液か らお創りになり、それから(段階的に)彼を仕上げていかれ たのだ。 (クルアーン 80:17‐19)
また胎児の性別も、この時期に決まります。アッラー(y)は仰っ ています: 天地の大権は、アッラーにのみ属する。かれはお望みにな るものを造られ、お望みの者には女子のみを、またお望みの 者には男子のみをお授けになる。またあるいは男女両方とも お授けになることもあれば、お望みの者を不妊にもされたりもする。実にかれこそは全知全能のお方なのである。 (ク ルアーン 42:49-50)
またアッラー(y)は、こうも仰っています: かれ(アッラー)こそはあなた方を、胎内でお望みのまま に形造られるお方。威光高くこの上なく英明なかれの他には、 崇拝すべきいかなるものも存在しない (クルアーン 3:6 )
もしこの混合体が子宮に着床しないと、それはアッラー(y)の ご意思と共に、子宮の外に排除されてしまいます。アッラー(y)は 仰っています: アッラーは、全女性が(その子宮に)宿すものをご存知で あられる。また(妊娠期間や胎児の数、大きさなどにおい て)子宮の減らすものと、増やすものも。全てはかれの御許 で(精密に)定められているのである。 (クルアーン 13: 8)
しかしもしアッラー(y)がそうお望みになられるのならば、そ の混合体は子宮に着床し、「ヌトゥファ」の段階から「アラカ」 の段階へと移ることになります。そしてそれは子宮壁に埋まり込 んだ形で、栄養分を摂取し始めます。アッラー(y)は仰りました: またわれら(アッラーのこと)は(その肉塊を)、われら が望む一定の期限が来るまで子宮に据え、それから子供とし て(胎内に)出す。 (クルアーン 22:5)
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第二段階:
これは「アラカ(アラビア語で、ヒルのような形状 の凝固した血液体を意味します)」の段階、と呼称されますが、 これは精液の混合体が子宮壁に付着し、その血液から滋養分を摂 取するという事実に基づいています。これは他の生物に吸い付き、 その滋養分を摂取するヒルに酷似しています。アッラー(y)は仰り ました: 読むのだ。(創造を行われたあなたの主の御名によって読 め。(かれは)人間を一滴の凝血からお創りになられた。 (96:1-2)
またアッラー(y)は、こうも仰っています: 彼(人間)はそもそも射出された精液の中の、一滴の精子 ではなかったのか?そしてそれから一塊の凝血となり、それ からまた(アッラーが)創造を加えられ、(その形を)整え 完成させられたのではないか?そしてそれ(1 人の人間)から 男女の組み合わせを創られたのでは? (クルアーン 75:37 -38)
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第三段階:こ
れは「ムドゥガ(アラビア語で、肉塊)」の段階と 呼称されますが、これはこの段階における胎児が噛んだ肉塊のよ うな形状をしているからです。アッラー(y)は仰りました: そしてわれら(アッラーのこと)は…凝血から肉塊を、肉 塊から骨を造り、そして骨の上に肉を着せた… (クルアー ン 23: 14)
この段階において、胎児には人間の形状が認められ始め、つい には人間そのものの形になるに至ります。アッラー(y)は仰ってい ます: 実に地にあるものも、天にあるものも、いかなるものもア ッラー(の知)から隠れることなどは出来ない。かれ(アッ ラー)こそはあなた方を、胎内でお望みのままに形造られる お方 (クルアーン 3:5-6)
また胎児に魂が吹き込まれるのは、実にこの段階におけること です。アッラー(y)は仰ります: …(アッラーは)その形を整え、そこにかれの魂を吹き込 まれた。そしてあなた方に聴覚と視覚と心をお与えになられ たのだ。あなた方は何と感謝することの少ないことか。 (クルアーン 32:7-9)
尚各々の段階には、決められた期間があります。これについて
は、教友イブン・マスウード()の伝えている伝承に詳細を見出す
ことが出来るでしょう。彼はこう伝えています:「正直者であり、
かつ信頼されるお方であるアッラーの使徒(y)は、私たちにこう
言いました:
“実にあなた方の構成要素は母の胎内に四十日間留まり、そ
れからそこで同じ期間一個の凝血となり、それからまたそこで
同じ期間 1 個の肉塊となる。それから一人の天使が遣わされ、
そこに魂を吹き込む。そしてそれに対して四つの言葉:つまり
彼の糧と寿命、そしてその行い、及び彼が幸福な者となるか、
あるいは不幸な者となるかを書き留めることを命じられる。
かれの他に真に崇拝すべきもののないお方(アッラーのこ
と)にかけて。あなた方の内のある者は、天国まで後一歩とい
う所まで天国の民の行為を行い続ける。しかしそこで(天命を
記された)書が勝り、それによって地獄の民の行為を行い、地
獄へと入るのだ。
またあなた方の内のある者は、地獄まで後一歩という所ま
で地獄の民の行為を行い続ける。しかしそこで(天命を記さ
れた)書が勝り、それによって天国の民の行為を行い、天国
へと入るのだ。” (アル=ブハーリーとムスリムの伝承)